市場開拓の方向性

1.  はじめに

市場開拓は、既存セグメントにおいて自社と取引関係にない新規顧客、即ち競合企業の顧客に対する「新規顧客開拓」と今までアプローチしていない新規のセグメントに対して自社の既存技術を用いて展開していく「新市場創造」に大きく大別されます。ただ新規セグメントといっても現在事業と全く関連のない市場に対してアプローチしていくことは難易度が高く、戦略展開も別の枠組みで考える必要があります。「新規事業開発」の範疇として別項で解説していきたいと思います。



2.    新規顧客開拓

既存セグメントにおける顧客を構造的に整理すると次のようになります。
①既存顧客
:自社と取引関係のある顧客で、自社を優先して選択してくれるロイヤルカスタマー(不戦勝)と競合とのコンペによって自社を選定した顧客(コンペ勝ち)に分かれます

②競合顧客
:自社との取引関係がなく、競合顧客を優先的に選択する「競合ロイヤル顧客」(不戦敗)と自社とのコンペによって競合を選定した顧客(コンペ負け)とに分かれます。

③潜在顧客
:潜在顧客は何らかの理由があって自社、競合ともに取引関係のない「白地の顧客」と方針や戦略上全く導入する意思のない「非顧客」に分かれます。

新規顧客開拓では、②競合顧客および③潜在顧客に対して、自社との取引を獲得していただくための活動を中心に考えていきます。

具体的なプロセスは以下の通りです。
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勝敗因分析 → 仮説立案 → 環境分析 → 仮説検証(=顧客へのアプローチ)
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【勝敗因分析】下図のように当社と競合企業の市場シェアを分解した場合、無競争で自社が獲得した「不戦勝」や無競争で競合に奪取された「不戦敗」の要因がどこにあるのか?また競争した中で自社が獲得した「コンペ勝ち」、競合が奪取した「コンペ負け」の要因がどこにあるのか?を探索していきます。要因探索は初めから答えを導くのではなく、考えられる要素を全て机上に出していく というイメージでブレーンストーミング形式で行うことが有効です。





【仮説立案】自社を選定してくれた要因(くれなかった要因)を仮説として探索していきます。「自社を選定してくれた」を出発点として何故そうなったのか?を繰り返し問うていきます。このような問題探索の分析(whyツリー)をすることによって、本質的に自社が持つ「強み」や「弱み」を見出すことが可能となります。それは商品の仕様であることもありますが、営業担当の商談の進め方、顧客へ提供している情報の質や鮮度など、営業活動に起因することも多く含まれます。漠然と自社の強みや弱みを検討することは困難ですが、営業担当を数名集めて、過去の顧客との取引を振り返ることによって取り組みやすくなります。


 

【環境分析】自社を選定してくれた(くれなかった)要因の背景は、どのような事象があるのか?「顧客を巡る経営環境の変化要因」を探索していきます。環境分析を行うことによって勝敗因分析からの仮説を肉付けしていくことが可能となります。環境変化要因は「PEST分析」と「5forces」というフレームワークを活用して要因抽出していきます。ここで重要なポイントは、自社の環境分析ではなく、顧客の経営環境を分析するという視点です。顧客の立場にたって環境分析することによって、これまで気付かなかった、顧客が自社(もしくは競合)の商品を選定した要因が浮き彫りになってきます。

  

【仮説検証】仮説を検証することで、自社の採用する施策の精度を向上させます。仮説検証は、BtoBの場合、顧客へのダイレクトインタビューが有効です。自社のこれまでの取引を振り返り、分析した結果を顧客に直接訴求するきっかけにもなります。また潜在的な顧客のニーズを見出すことも可能となります。

大切なのは顧客が望んでいる事の中で、自社が競合よりも優位に立って解消できていることは、何なのか?自社の強みを見出すことです。営業活動は個人の活動内容に依存することが多く、埋没しているのが現状です。成功要因もしくは失敗要因から、それらの活動を「見える化」することによって、戦略的な活動を展開していくことが可能となります。

3.    新市場創造

次に新規セグメントへの営業展開です。
自社が持つ既存の技術(シーズ)を活用して、今までアプローチしていなかった新しいセグメントに営業展開していきます。
分かり易い例として、国内企業向けのマーケティング展開しかしていなかった企業が海外展開していくというものです。その際に重要なのは自社が持つ強み(シーズ)が最も活かせる市場はどこにあるのか?という視点です。単に海外展開といっても対象となる国や地域は幅広く、どこのエリアに重点化していくかという意思決定が必要になります。「製品の普及率」や「競合商品の商品力と自社の比較」、「市場規模」、「取引チャネル」などを総合的に勘案していきます。「魅力度」と「競合優位」という2軸で整理すると優先順位をつけ易くなります。例えば照明機器のアメリカ市場への展開における市場戦略のプロセスとしては以下のようになります。



進出先であるアメリカ市場の状況を分析し重点エリアを選定した後に、そのエリアで最も優位に販売できる商品をマッチさせることがポイントとなります。戦略の前提は、重点化ということです。

海外展開の他、現市場と関連するセグメントへの展開方法として、機能軸による発想法があります。その検討プロセスとしては以下のようになります。

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機能抽出 → ターゲット発想 → ベネフィット発想 → 新市場の選定
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【機能抽出】自社の商品の機能を整理します。その商品が基本的に提供できる特性を抽出します。特に競合他社にはない自社だけが提供できる機能を中心に検討していきます。最新の機能だけではなく長年提供してきている機能も含めて抽出していきます。例えばRFDIの機能を抜き出すと以下のように整理することができます。

読み取り範囲が広い
バーコードは、バーコードリーダが読める位置に意図的に持ってこなければ読めないが、RFタグは、読み取り範囲が広くまた読み取れる方向も自由度が大きいため、おおまかな位置決めで読むことができる。
一度に多くのRFタグが読める数十ミリ秒~数百ミリ秒で1つのRFタグを読むことができる。また、多くのタグが密集して配置されていても、それぞれを見分ける技術(衝突回避)が開発されているため、タグが多少重なっていても、読み取りが可能である。
書き込みが可能1バーコードは印刷物なので変更できないが、RFタグは書き込みが可能なものがある。流通過程の履歴情報などを書き込むことで、新たな利用方法が期待できる。
見えなくても読めるRFタグが目に見えない隠れた位置にあっても、タグ表面がホコリ、泥などで汚れていても読み取り可能である。

【ターゲット発想】次に、機能によって、どのような人(企業)が便利になるか、課題を解決できるかを発想していきます。この場合の留意点として「~している人(企業)」というように抽象度を高めて表現することがポイントとなります。RFIDの例で考えてみると、
  ■ 大量のデータを管理する必要のある企業
  ■ 移動するモノやヒトの動き(履歴)を管理する必要のある企業
  ■ 遠隔地や分散している対象を管理する必要のある企業 などが考えられます。

【ベネフィット発想】商品の機能によってどのようなベネフィットが享受できるかを検討していきます。表現としては「~できる」「~になる」とします。RFIDによるベネフィットとしては
  ■ 効率化が進展することによって管理コストを抑制できる
  ■ 混雑や待機時間を削減することによって顧客に対して魅力を向上できる
  ■ 競合する他社と差別化できる などが考えられます。

【新市場の選定】最終的にターゲットとベネフィットをマトリクスに置いて、交わるセルに具体的な業界や業務を発想していきます。RFIDの例では以下の通りになります。それぞの市場に対して、「魅力度」と「競合優位性」を基準として優先順位をつけていきます。



また関連市場の探索要素として
①顧客の商品特性(既存業界が銀行であれば証券や生損保)
②営業チャネルとしての関連(自社の販売代理店がリーチしている業界)
③顧客の顧客の特性(銀行であれば富裕層の特性をもとに関連市場を探索する)
などの視点があります。ポイントは既成概念に囚われず可能性を広げるということを意識して、関係者でブレーンストーミングしていくことです。

4.    プロモーション展開

新規市場が選定できた後には、対象顧客に対してプロモーション展開していきます。BtoB企業は対象顧客が少なく、且つ組織的な意思決定で購買されることが多いため、これまでプロモーションは営業担当者による人的営業が主体でありました。しかし作今のインターネットの普及と顧客企業の意思決定環境の変化から、ネットを絡めたリアルとの融合戦略が有効となってきました。
BtoB企業のプロモーション戦略としてまず明確にしなければならないのは、顧客企業の購買プロセスを明確にし、プロセス毎に最適な媒体と訴求事項を見出す事です。商品特性毎に異なりますが企業の商品購買としては、図に示すことができます。



顧客の購買プロセスを明確にした上で、それぞれの段階で、顧客の意識と、意識に適した媒体、訴求ポイントを検討していきます。



プロモーションをマネジメントしていくには、PDCAサイクルを展開していくということが求められます。各段階でどの程度の成果が上がったのか指標を定め、達成要因を分析していくことで、最終受注までのプロモーションの精度を高めることができます。プロモーションを企画する段階で、成果指標と測定方法、実施以前の状態を可能な限り数値で表していくことが求められます。



当然ですが新規市場開拓では、未知の世界です。ただ当てずっぽうに施策展開したのでは、高い成長は望めません。ターゲット顧客の購買特性をしっかりと把握して、最も適切と考えらる媒体と表現方法、訴求事項を組み合わせて、仮説を立てていくことが求められます。BtoBの場合、BtoCとは違って直接顧客の反応を見出すことができるだけに論理的に体系を組むという事が結果として効率的で効果のあがる施策に繋がります。

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