BtoB企業の課題

1.はじめに

BtoB企業は現在どのような経営課題を抱えており、課題に対する打ち手としてはどのような策を検討しているのか?明らかにしていきたいと思います。尚本文の記述に際しては、BtoBコンソーシアムが2013年3月に実施した「BtoBマーケティング実態調査」を根拠としております。(レポートご希望の方ははこちらをクリックしてください)「BtoBマーケティング実態調査」では①全体の傾向としてBtoB企業の特徴を記載、②増収増益企業と減収減益企業の比較において顕著なものを、業績向上のためのポイントとして抽出しております。
従いまして本コラムにつきましても全体傾向を眺めつつ、業績向上のための課題に焦点を当てていきたいと考えております。

*BtoB企業全般に言える事項については各選択肢の累積構成比が70%までのものを記述の対象とした。(グラフの赤塗り)
*増収増益グループの事業活動の特徴を見出すことを目的として減収減益グループとの比較を行った。5%の有意水準で2つのグループの差が有意(Z検定)となる選択肢に着目して分析を進めた。(グラフの黄色塗り)

2.BtoB企業の業績推移

今回実施したアンケートの回答企業は売上高100億円以上を対象としましたが、2012年度の業績(見通し)は、増収増益企業が意外にも多く全体の42%、減収減益企業は25%に留まった。絶対額としての売上高、営業利益を聴取したモノではなく、前期と比較してどの程度増加したか?という質問であったために、増収増益の水準は不明でありますが、業績推移としてはBtoB企業は全体として、良好になりつつあると判断しても良いと思います。



3.BtoB企業の経営環境の変化

全体としては、「コストダウンの激しくなった顧客が増加」と回答した企業が62%を占めており、大きな環境変化要因として捉えられています。加えて「購買先選定の合理的判断が強まった顧客が増加」や「国内企業だけでなく海外企業との競合が激しい」「これまで自社1社の指名発注からコンペ形式に変更になった顧客が増加」など所謂BtoB企業の事業特性として言われてきた「相互依存関係を背景にした長期安定取引」が崩壊しつつある現象がみられます。
更に増収増益企業と減収減益企業の差異をみると、減収減益企業ほど、「コストダウン要請」「海外企業との競合」や「発注単位が減少している顧客が増加」の比率が顕著に高いことが特徴的です。(統計的に差異が検証)
このことは増収増益企業は価格以外の差別化ポイントを有しており、競合優位性を築くことができていると解釈することができます。国内景気の長期低迷によってBtoB企業の顧客(企業・組織)も業績が低調であることが推測されます。そういった厳しい環境の中で価格以外の訴求ポイントを有していることが、業績向上へのポイントであると言えます。コモディティ化をいち早く抜け出すことができるかどうか?ということです。



4.BtoB企業の市場課題

全体としては、「新規顧客開拓ができていない」「製品そのものの差別化が困難で価格競争が激化している」と回答した企業が約5割存在しています。前述の「経営環境の変化」の要因として、コモディティ化がBtoB企業においても、まん延していることが窺えます。既存企業との取引について、コストダウン養成が激しい中で、新規顧客を開拓しようにも価格以外で差別化することができない ジレンマ に陥っているということです。
「新規顧客を開拓できていない」のは増収増益企業、減収減益企業ともに約5割であり、BtoB企業全般に言える大きな課題であると考えることができます。ここから増収増益企業は、既存顧客に対して、コストダウン要請されない付加価値の高い商品を開発、展開していることが業績向上のポイントであると類推できます。
減収減益企業の課題としては、「営業現場での戦略遂行が有効に展開できていない」「営業現場での提案プロセスが標準化されていない」「組織的な営業体制が構築できていない」など営業現場での課題が目につきます。逆に捉えれば、戦略と現場での実行のバランスがとれれば、経営環境の厳しさを乗り切ることができるというのも1つの側面と言えるのではないでしょうか。



5.新商品新市場関連の課題

新商品についても「競合優位性のある新商品が開発できていない」はかなり高い比率を示しています。特に減収減益企業では約5割が、そのように回答しております。減収減益企業で次に高い課題は、「付加価値の高い商品・サービスの企画ができていない」となっております。新商品が開発できないのは「企画」ができていないことが主因で、さらには「ニーズの先取り対応ができていない」ことが本質的な課題であると類推することができます。事業環境の要素として、3Cというフレームワークがあります。Competitor(競合)よりも自社商品の価値を感じていただき、より多くの商品を購入いただくにはCustomer(顧客)のニーズを捉えた商品であることが必須条件となります。
減収減益企業にとって「新商品開発」は大きな課題と捉えられます。現在取引している顧客企業の潜在ニーズは何か?探索していくことが、まず大事と考えます。



6.競争力の源泉

BtoB企業の競争力の源泉は、「健全な財務体質」と並んで「企画提案力」と挙げた企業が最も多く回答しています。増収増益企業と減収減益企業との差異が大きかったのは「基礎技術の研究開発力」「製品設計力」「マーケティング力」の3つが挙げられます。
マーケティングに基づいたニーズを満たす製品を設計していくという方向性と、次世代の新技術開発をしていくという長期視点、両面持ち合わせることが求められているということです。
ところが減収減益企業は、マーケティング力は弱く、企画提案力は高いと回答しています。マーケティングではなく顧客企業からの要望に応えると言う意味での企画提案と捉えると、収益構造を健全化するためには、特定企業からの要望によって造られた商品をいかに量産し、水平展開できるか、標準化できるかという課題が浮かび上がってきます。そのためのマーケティングが不足していると考えることができます。



7.マーケティングに対する取組

BtoB企業のマーケティングに対する取組を見ると、「マーケティング諸施策の効果を測定することができる」「マーケティング知識・スキル習得のための教育体制が整っている」「人的営業活動とマーケティング・ブランド戦略が連携している」といった要素が著しく低く、実質的にマーケティングが組織に定着している企業は少ないと類推することができます。
ただ戦略レベルでは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングは構築されており、その運用が課題と言えるのではないでしょうか。即ちポジショニングを図る(維持する)ためには、どのような商品を開発しプロモーションしていったらよいかということです。
減収減益企業の課題をみると、まず致命的なのは「ターゲットとする顧客セグメントを明確に設定している」が低率であること、さらに「顧客ニーズを捉えた商品・サービスの企画が成されている」に至っては1割存在しないという状況です。その場の状況に合わせて臨機応変に対応することも必要ですが戦略性の低さが業績低迷に起因しているのではないかと推察されます。



8.課題の整理

ここまでアンケート結果をもとにBtoB企業の課題を抽出してきました。減収減益企業の業績低迷の要因の1つに戦略性の欠如があると申しましたが、整理をすると、コモディティ化に対する施策として、だれに対して、どんな価値を提供していくのか(高めていくのか)が不明確であることが本質的な課題であると考えます。
既存顧客に対して既存商品を提供しているだけでは、シュリンクしている市場においては、企業の存続危機を招きかねません。新規の顧客を開拓していくのか?更にこれまで対象としていなかったセグメントまで範囲に入れて開拓を進めていくべきか?それとも既存顧客への価値を向上させるためにこれまでは一味違う価値を不可するのか?といった方向性を意思決定していかなければなりません。
業績低迷企業はそういった意思決定がまず成されていないのではないかと思われます。「ドメインの再設定が急務である」とまとめさせていただきます。



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